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芸術の秋! リニューアルオープンの「長野県信濃美術館 東山魁夷館」の見どころと長野市内美術館の企画展をご紹介

2019年10月5日(土)に、改修工事のための約2年半の休館を経て再開する「東山魁夷館」。リニューアルのポイントや再開当日から開催される「リニューアルオープン記念展」の見どころを、学芸員の松浦千栄子さんにお聞きしました。

 

施設を拡充し、より幅広い魁夷作品を展示

昭和から平成、そして現代を代表する画家の一人といわれる東山魁夷。柔らかな色使いや深い情感をたたえた風景画で戦後の日本画界に足跡を残し、この世を去って20年が経った今なお、高い人気を誇っています。
そんな「東山魁夷」の名がつく美術館は、現在全国に4カ所。そのなかでも「東山魁夷館」は最初に開館し、収蔵作品も900点以上と最多を誇ります。完成作品だけでなく各地でのスケッチや大作の下図も数多く寄贈されており、作品の制作過程も知ることができる点が大きな特徴です。


そうしたなかで、今回の改修工事は「東山魁夷館」開館以来、約30年間で初となる試みでした。施設面では作品を保管する収蔵庫への搬入口となるトラックヤードを増設し、収蔵庫も拡張したうえで空調も整備し、保存環境を向上させました。

また、展示室はより多くの来館者に快適に鑑賞してもらえるよう、バリアフリーを拡充。既存の車椅子トイレに加え、多目的トイレと授乳室も設置しました。そして以前は館内に1台だったエレベーターも、エントランスの屋外に段差を埋めるかたちで増設。展示室にも入口と出口、それぞれにエレベーターを設けることで、よりスムーズな動線で観覧できるようになっています。


さらにミュージアムショップの広さが倍になり、グッズも充実。「今後はミュージアムグッズを買いに来るという目的の楽しみ方もできると思います」と松浦さんは話します。


展示に関しても今までは年6回、収蔵作品の展示替えを行ってきましたが、今後は外部で収蔵されている作品も年一回ほどの頻度で借用し、魁夷のより多様な作品を長野県で見られるようにめざしていくそう。その第一弾ともいうべき展示が、今回開催される特別展「リニューアルオープン記念展」です。


「リニューアルオープン記念展」の見どころ

「東山魁夷館」での外部所蔵作品の展示は、平成20(2008)年に開催した「生誕100年 東山魁夷 展」、平成27(2015)年の「日展 三山展」以来3回目。収蔵品を活かし展示としては今回が初めてだそう。絵画の借用点数は4点。収蔵作品だけではなかなか見られない代表作を鑑賞することができます。それぞれの作品の見どころを、松浦さんの解説でご紹介します。

 

《光昏》(1955年、日本芸術院蔵)

                   

「旧野尻湖ホテルから見た野尻湖と黒姫山を描いています。当館では、《光昏》の下図を多く収蔵していますが、これまでは完成の一歩手前までしか見ることができませんでした。今回、ついに完成作品まで見ていただけます。画中の野尻湖や黒姫山は同地のものですが、手前の林の絵は実は箱根の景色を合わせたもの。というのも、東山がその年の日展に向けて題材を考えている際、ふと以前に描いた野尻湖のスケッチが目に止まり、金泥の空に湖を黒く塗ったらどうなるだろうと構想しましたが、もともとのスケッチにあった野尻湖周辺の林ではやや貧弱な印象を受けたことから、箱根の林との構成を考えたのだとか。そして改めて箱根でスケッチをし、組み合わせて制作を進めたそうです。今回、完成作品が展示されることで、当館が収蔵している下図が生きてくると考えています」

ちなみに、芸術家は感情の赴くままに作品を制作するイメージもありますが、東山は非常に几帳面な性格で、完成までに多くの下図やスケッチを制作するのだそう。昭和30年度の芸術院賞を受賞した《光昏》は長辺が2mを超える大作ですが、小さなサイズのプランや下図から始め、試作を繰り返し、完成作品と同サイズの下図も描かれています。そうした工程を経て初めて完成作品を制作するという、東山らしい几帳面なプロセスを展示では見ることができます。

 

《花明り》(1968年、大和証券グループ本社蔵)
《春雪》(1973年、千葉県立美術館蔵)

                     

                     

「いずれも京都を描いた作品です。東山魁夷はしばしば連作となるシリーズ作品を制作していますが、京都の円山公園の桜を題材にした《花明り》は京都の四季を描いたシリーズ「京洛四季」の代表作。非常に人気が高い作品で、今まで当館では習作(完成の一歩手前の作品)しか展示できませんでした。今回は当館所蔵のほかの「京洛四季」の習作とともに展示します。また、《春雪》も京都の洛北を描いた作品。唐招提寺壁画で挑んだ水墨画を経て生み出されました」

 

《郷愁》(1948年、個人蔵)



「茅野から諏訪に向かって流れる川のほとりが描かれている作品です。御射鹿池を描いた当館収蔵の名作《緑響く》(1982年)もそうですが、東山は若い頃から、何回もスケッチのために茅野や八ヶ岳周辺を訪れていました。この作品も、その当時見た風景が描かれているようです」

 

なお、東山ほどまとまった数の下図を画家本人が管理していることはなかなかないのではないかと松浦さん。寄贈の際は、すべてご本人が額装まで行ったそうです。


「これはあくまで私の想像ですが、実際は残されている数の倍以上のスケッチや下図があったのだと思っています。ただ、東山は几帳面で完璧主義のような一面もあったので、人に見せてよいものと見せたくないものを選別し、長野県に寄贈したと思われます。鑑賞の際には『このほかにも多くの下図があった』と想像してもらえたら、より楽しんでいただけることでしょう」


また、今回は東山が使っていた筆や絵の具、大型のイーゼルなどもご遺族からお借りして展示するのだそう。より制作風景をイメージしやすい展示となる予定です。


では、改めて松浦さんに東山魁夷の魅力を伺いました。
「作品は基本的に人物や動物が登場しませんし、そういった意味では冷たい印象も受けますが、東山魁夷が残している多くのエッセイなどの文章を読むと、内向的でいろんなことに悩んだり、苦しんだりする姿など、人間らしさが垣間見えて親近感を覚えます。また、美術批評から自叙伝までさまざまな執筆を手がけ、作家としても活躍できたのではないかと思うほど文章が上手なのもおもしろさ。そうした要素を複合的に楽しんでもらえるところが個人的に感じる魅力です。絵画作品だけではなく、東山魁夷をより深く知りたい方には残された文章も読んでいただけるとまた新しい発見があると思います」

なお、2021年春の「県信濃美術館」本館のリニューアルの際には「アートライブラリー」というかたちで美術図書館も開館予定だとか。すでに絶版となってしまった魁夷のエッセイなども設置し、来館者が自由に読めるようになる予定だそうです。どうぞお楽しみに。

企画展データ

企画展名:東山魁夷館リニューアルオープン記念展
開催期間:2019年10月5日(土)~12月3日(火)
時  間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休  館 日: 毎週水曜日
料  金:一般500円、大学生300円、高校生以下無料
※11月22日(金)、23日(土・祝)は「いい夫婦の日」特別割引として、夫婦で来館した場合、1名分の入場料で入館可。受付で結婚記念日を申告
※現在、2021年3月31日まで観覧できる【東山魁夷館リニューアルオープン記念パスポート】を2020年7月28日(火)まで販売中

住所:長野市箱清水1-4-4(善光寺東隣)
問い合わせ先:026-232-0052
URL:http://www.npsam.com/

 


この秋の長野市内美術館の企画展も一挙にご紹介

深まる芸術の秋。「東山魁夷館」のほかにも、長野市内の美術館では趣向を凝らしたさまざまな企画展が開催されています。各館で感性を揺さぶるアートを楽しんでみませんか。

水野美術館 「追悼水木しげる ゲゲゲの人生展​」

                          
        
 (c)水木プロダクション

「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」「河童の三平」など、数多くのヒット作を生み出した漫画家であり妖怪研究家でもある水木しげる(1922~2015年)。戦争で片腕を失くし、戦後も貧困生活を強いられるなど、波乱に満ちた生涯を生き抜いた水木ですが、そのユーモアあふれる独特な作品や人生観を表わす言葉は、今も多くの人々を魅了し続けています。
本展は、水木プロダクションの全面的な協力のもと、水木が遺した作品・資料・私物までを徹底的に振り返る、回顧展の決定版です。少年期の習作、戦地で描いたスケッチ、漫画や妖怪画の原稿に加え、世界中から集めた妖怪・精霊像コレクションなどを含めた約390点を通じて、水木しげるの魅力に迫ります。

<関連イベント>
●水木しげるの紙芝居上演と絵本よみきかせ
長野朝日放送(abn)アナウンサーによる妖怪紙芝居の上演(申し込み不要)。
開催日時:2019年10月5日(土)11:30~・13:00~・14:00~
料金:参加無料(要当日有効の入館券)

●集え、妖怪たち!!仮装の日
妖怪に仮装してきた方は、入館料が半額に(他の割引サービスとの併用不可)。
「帽子だけ」「ワンポイントの飾りだけ」などは対象外となります。
開催日時:2019年10月26日(土)、27日(日)

●水木しげるを辿る 小布施 × ゲゲゲの人生展 オトクに鑑賞割引
おぶせミュージアム・中島千波館、髙井鴻山記念館いずれかの半券チケットを水野美術館で提示すると「ゲゲゲの人生展」当日券が200円引きになります。また、「ゲゲゲの人生展」半券チケットをおぶせミュージアム・ 中島千波館、髙井鴻山記念館で提示すると、入館料が各50円引きに(他の割引サービスとの併用不可)。

開催日時:会期中、毎日開催

企画展データ

開催期間:開催中~2019年11月24日(日)会期中、一部展示替えあり
時  間:10月31日(木)まで9:30~17:30(最終入館17:00)、
     11月1日(金)から9:30~17:00(最終入館16:30)
     ※11月23日(土・祝)は長野えびす講煙火大会のため
      18:00(最終入館17:30)まで開館
休  館 日: 毎週月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)
料  金:一般1,000円、中学・高校生700円、小学生400円 
住  所:長野市若里6-2-20
お問合せ:026-229-6333
URL:http://mizuki-ten.jp/

 

北野美術館「北野美術館名品展『秋編』」

                      

                     
            歌川国芳「田家茶話 六老之図」(北野美術館所蔵)

初秋から中秋、晩秋までさまざまな「秋」を感じられる日本画を中心に、洋画、彫刻、工芸品など約90点のバラエティ豊かな作品群を展示しています。また本展では、年を重ねるにつれ身につまされる、でもクスッと思わず笑ってしまう密かな人気の作品、歌川国芳の浮世絵「田家茶話六老之図」を公開中です。

<関連イベント>
●ジグソーパズルに挑戦!
入館者のみ、1人1回まで。展示室内に設置された職員手作りのジグソーパズルを完成させたら受付にお持ちください。パズルと同柄のポストカードを1枚プレゼント!
開催日時:会期中、毎日開催

●学芸員によるギャラリートーク
学芸員の解説を1時間ほど聞きながら、展示鑑賞を行います(予約不要)。開始5分前までに入館受付を済ませ、ロビーに集合してください。
開催日時:2019年10月5日(土)、11月3日(日・祝)各日10:00~

企画展データ

開催期間:開催中~2019年11月24日(日)
時  間:9:30~17:00(最終入館16:30)
休  館 日:毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)
料  金:一般700円、学生500円、中学生以下無料
住  所:長野市若穂綿内7963-2
お問合せ:026-282-3450
URL:http://kitano-museum.or.jp/

 

北野カルチュラルセンター
「長野放送開局50周年記念 木梨憲武展 Timing -瞬間の光り-」

                      

2014年から2016年にかけて全国8会場を巡回し、大きな話題をよんだ「木梨憲武展×20years」から2年。アーティストとして高い評価を受けた木梨憲武は、2018年6月、自らも得意とするストリートカルチャーの発信地、イギリス・ロンドンでの個展開催を実現するなど、ますます活躍の場を広げています。
本展では、ロンドンで披露した新作を中心に、絵画、ドローイング、映像、オブジェなど、表現方法に縛られない作品の数々を展示します。さらに自由に、さらに洗練された作品をお楽しみください。

企画展データ

開催期間:2019年10月26日(土)~12月1日(日)
時  間:10:00~17:00(最終入場16:30)
休  館 日:会期中なし
料  金:一般1,200円、中高生800円、小学生600円(前売はいずれも200円引き)
     未就学児無料 
住  所:長野市西後町1603
お問合せ:026-227-3000(NBS長野放送)
URL:https://www.nbs-tv.co.jp/event/2019/10/timing.php

 

信州新町美術館「Watercolor Artist : Kazuya Takagi ~水絵の彼方」

                       

須坂市在住の水彩画家・高木一也さんの展覧会。高いデッサン力と透明感のある作品、約60点を展示しています。

<関連イベント>
●ミュージアムコンサート「音楽のシェフ♪ア・ラ・カルト」
金管バンド「ア・ラ・カルト」による約1時間の演奏会(定員70人・小学生以上)。
3日前までに電話(026-262-3500)でお申し込みください。
開催日時:2019年10月6日(日)14:00
料  金:参加無料(要当日有効の入館券)

●作家によるギャラリートーク
開催日時:2019年10月13日(日)、11月10日(日)、12月1日(日)
               14:00~(申し込み不要)
料  金:参加無料(要当日有効の入館券)

企画展データ

開催期間:開催中~2020年1月19日(日)
時  間:9:00~16:30(最終入館16:00)
休  館 日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)および祝日の翌日
料  金:一般500円、高校生300円、小・中学生200円
    (毎週土曜日は小・中学生無料、11月3日<文化の日>は入館無料)
住  所:長野市信州新町上条88-3
お問合せ:026-262-3500
URL:http://www.ngn.janis.or.jp/~shinmachi-museum/