令和の岩戸開き、あな清明(さやけ)おけ 〜7年目ごとに一度の戸隠神社式年大祭、令和3年4月25日(日)から〜


 



神代の昔から「天の岩戸」伝説が伝わり、山岳信仰と修験道のメッカとして栄えた霊場。そして、奥社(本社)・九頭龍社・中社・火之御子社・宝光社の五社からなり、この地で二千年余の歴史を刻む、戸隠神社。

ここ戸隠は、雄大な自然の中にある日本有数の聖地。御朱印をいただく「五社巡り」や「戸隠古道」ウォークなど、自然と歴史を体感できるパワースポットとして全国から多くの参拝者が訪れます。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された中社・宝光社の街並みを散策し、日本三大そばの一つとして全国に知られる戸隠そばを味わうのもまた定番の楽しみです。



戸隠神社最大のお祭りが7年目(丑年と未年)ごとに行われる「式年大祭」。かつて奥社に一緒に祀られ、後に現在地に遷祀された神々が7年間の神業を奥社に御奉告なさる大祭です。今は宝光社の神様が御父神である中社の神様のもとに渡御され、父子の対話、奥社への御奉告の後、還御されるまで、さまざまな神事や催しが行われます。


 

そして令和3年は丑年! 古式にのっとり令和初の戸隠神社式年大祭が
「令和の岩戸開き」「清明(さやけ)」をテーマに斎行されます。

 

■令和3年 戸隠神社式年大祭 主な行事予定

4月25日(日) 式年大祭執行奉告祭

5月 9日(日) 渡御の儀

5月14日(金) 中社祈年祭

5月15日(土) 奥社祈年祭・奥社奉告祭

5月16日(日) 宝光社祈年祭

5月23日(日) 還御の儀

5月25日(火) 式年大祭終了奉告祭

※7月11日(日) 柱松神事

 

戸隠神社の歴史を伝える太々神楽

戸隠神社は神仏習合の頃は「戸隠山顕光寺」と称する寺として栄え、明治の神仏分離により戸隠神社となりました。奥社の御祭神天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)をはじめ、天の岩戸開きにゆかりのある神々がお祀りされています。

長野県指定無形民俗文化財にも登録される戸隠神社太々神楽(だいだいかぐら)は、天の岩戸開き神話に由来し、神々の高い御功績を称え、全部で10種類(十座)の舞が献じられます。



太々神楽で天の岩戸開き神話を再現しているのが9番目の「岩戸開きの舞」。その内容を水野邦樹宮司にお話しいただきました。

「天照大御神(あまてらすおおみかみ)が岩屋にお隠れになり、世の中が真っ暗になっていろいろな禍が起こりました。どうしたら元の世界にお戻りいただけるか。困った神々が岩屋の前に集まり思案していると、天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)が、お隠れになっていても世の中は変わらず明るいかのように表現しよう、と考えました。そして天鈿女命(あめのうずめのみこと)が面白おかしく踊り、神々が賑やかにはやし立てました。その騒ぎを不思議に思った天照大御神が様子を見ようと岩戸を少し開けると、すかさず天手力雄命が渾身の力で岩戸を引き開け、天照大御神を外にお連れしました。これにより世の中はめでたく明るさを取り戻し、清明(さやけ)となりました」

その時、清らかで明るい、爽やかな世界になったことを喜び発せられたのが、次のお言葉です。
 

天晴れ(あはれ)、天晴れ、

あな面白(おもしろ)、

あな手伸し(たのし)、

あな清明(さやけ)おけ
 

「令和3年式年大祭のテーマ『令和の岩戸開き』『清明』はこのお言葉に由来します。コロナ禍の今、早くこの禍を祓い、世の中に再び明るさを取り戻してほしいという人々の切実な願いをここに込めました」

 

時代絵巻は厳かに華やかに、そして愛らしく。

戸隠神社式年大祭のハイライト

           

■渡御の儀・還御の儀

「渡御の儀」は、宝光社の御祭神、天表春命(あめのうわはるのみこと)が御父神、天八意思兼命が祀られている中社にお渡りになる神事。「還御の儀」は、6年ぶりの父子のご対面を果たし、渡御以来約2週間の御同座、奥社への御奉告を経て、再び宝光社にお還りになる神事です。

どちらも当日午前中、ご出発になる社殿で獅子神楽の奉納が行われます。戸隠の各集落に今も連綿と伝わる獅子神楽が一堂に会する晴れの舞台です。

宝光社の御神体を戴いた「御鳳輦(ごほうれん)」は、宝光社と中社の約3キロの坂道を2時間かけてゆっくりと進みます。御鳳輦の前後には、威儀物(いぎもの)、神楽装束、稚児、戸隠・柵(しがらみ)地区の獅子神楽など、雅な装束でかためた数百人の行列が連なり、まさに豪華絢爛な時代絵巻。ご到着になった社殿でも獅子神楽の奉納など神事が行われます。

前回までは重さ約500キロもの神輿でお渡りになりましたが、今回は初めて御鳳輦に戴いての行列となり、「令和」時代へ清らかな新風を吹きこみます。

■太々神楽奉納

式年大祭期間中、渡御の儀、還御の儀、奥社奉告祭の各日を除く毎日、中社社殿で行われる太々神楽奉納もぜひ注目したい行事です。戸隠神社の太々神楽は、諸悪や災いを打ち払う舞、五穀豊穣を祈る舞、愛らしい巫子の舞、天の岩戸開きにちなんだ舞など、全部で10種類の舞があります。

見どころは、巫子さんの愛らしい舞です。巫子さんとして奉仕するのは全員、戸隠地区の小学校4~6年生の女の子たち。「巫子舞」「吉備楽の舞」「直会の舞」の3つを披露します。

 

貴重な仏さまにも毎日出会えます

式年大祭期間中、毎日行われる神事や行事は他にもいろいろ。さらに「神賑行事」として、奉納コンサートや各種奉納がにぎやかに繰り広げられます。


式年大祭特別朝拝(中社・宝光社 朝6:30~)
中社・宝光社の社殿で毎日朝6時半から行われます。近くの宿坊や宿泊施設に泊まり、ご参拝ください。

式年大祭特別祈祷(中社 9:30~/10:15~/11:00~/11:45~/12:30~/13:15~  ※渡御の儀・還御の儀の斎行日は除く)
中社で各時間に行い、特別祈祷を受けられます。

離山仏里帰り拝観(宝光社 10:00~16:30 ※渡御の儀・還御の儀の斎行日は除く)
神仏習合により、祀られていた戸隠の神様と仏様。明治の神仏分離で離れられた仏様が式年大祭に限りお戻りになり、特別にご拝観いただけます。

御神座回廊特別参拝・御印文拝戴(宝光社 10:00~16:30 ※渡御の儀・還御の儀の斎行日は除く)
宝光社社殿下にある御神座回廊は式年大祭に限り通ることができます。古くから善光寺に3つ、戸隠神社に2つ伝わる御印文。頭に押していただくと現世利益が約束されるといわれる、ありがたい儀式です。

中社宝物館特別展(中社青龍殿内 9:00~16:30)
戸隠神社ほか一山に伝わる貴重な宝物を展示します。

式年大祭特別展(戸隠観光情報センター2階)
式年大祭とはどういうものか、よく分かる展示を行っています。※令和2年7月から開催中

 

勇壮な火祭りは月に

柱松神事

鎌倉時代に始まり、かつては戸隠の主要な行事だった柱松神事。江戸末期に中断されましたが、平成15年式年大祭で復活しました。年に一度、月に行われます。戸隠特産の根曲竹や木でつくられた柱松に火をつけ世情を占う、勇壮な火祭りは必見です。

 

明るい穏やかな世の中を取り戻す願いを込めて。

令和の御代替わりと式年大祭記念中社大鳥居建て替え

 

     

水野宮司にとって令和3年式年大祭は、宮司就任後初めての大祭となります。大役にかける思いをうかがいました。

「新型コロナウイルス感染症という疫病が蔓延する中、斎行には随分悩みました。しかし岩戸開きの話にならって戸隠の神々の御神徳をいただき、この状況を少しでも改善し、明るい穏やかな世の中を取り戻していただきたい、という願いにより決断。それをひたすらにお願いするお祭りにしたいと思っています。
 

もうひとつぜひ注目いただきたいのが、戸隠神社のシンボルでもある中社大鳥居。令和2年11月に建て替えられたばかりの新しい大鳥居です。先代大鳥居は昭和11年に建てられ長く風雪に耐えてきましたが、笠木や柱に腐朽が目立つようになっていました。幸い大変貴重なカナダ檜の大木にご縁があり、令和の御代替わりと令和初の式年大祭記念事業として建て替えることになりました。こちらもぜひご覧いただければ幸いです」

戸隠神社式年大祭の期間は4月25日(日)から5月25日(火)までの31日間。厳かに華やかに繰り広げられる時代絵巻をぜひご覧ください。

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